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2010/03/08

パン屋大襲撃

予告どおりオペラ・ブッファ「パン屋大襲撃」行ってまいりました。

2010年3月9日 於サントリーホール ブルーローズ

原作:村上春樹(「パン屋襲撃」「パン屋再襲撃」)
脚本:ヨハナン・カルディ
音楽:望月京
演出:粟國淳
指揮:ヨハネ・カリツケ
出演:飯田みち代(S)、高橋淳(T)、大久保光哉(B-Br) 、畠山茂(B)、井上雅人(Br)、吉原圭子(S)、太刀川昭(C-T) 他
演奏:東京シンフォニエッタ

あらすじ:
深夜とめどもない空腹感に襲われ目覚めた「僕」は若かりし頃ヒッピー的な生活を送っていた時に空腹を癒すためにパン屋を襲撃し、ワーグナーを聴く代償にパンを得たことを「妻」に話す。
今の空腹はその呪いだと言う「妻」は、呪いを解くためにもう一度パン屋を襲うのだと僕を唆す。
深夜の東京で開いているパン屋はなく、「僕」たちは仕方なくマクドナルドを襲撃することになる。


 まずは、望月と粟國の20分くらいのトーク。
 原作や脚本に指定された数々の音楽からの引用(これを望月はコスプレという言葉も使って説明)であるとか、日本語で原作を読んでいる演出家(ルツェルンやウィーンではあちらの演出家)ならではの安心感とか。

 舞台自体は、脚本がスラップスティック調だというのでクールな村上ワールドがどう料理されるのか見当が付かなかったが、チャップリンを模した7人の狂言回しやら、メタ演劇的な演出も違和感なく楽しめた。パン屋の親父がいかにもマイスター・ジンガーのようで存在自体がワーグナー的。この作品はワーグナーに言及するメタ・オペラという側面を持つわけで、単なる引用だけでなくそういった仕掛けがあっても良かったようにも思う。
 音楽的には、効果音的に使われるエレキギター、スネアドラムやピアノ、ワーグナーなどのテープは目立っていたが他の音は埋もれがちとなる。演出、音響の問題もあるのかもしれないが、もっとオケを前面に押し出し現代音楽しても良かったのではないだろうか。カリツケはハイパーフリーオペラという言葉を使ったようだが、音楽がもっと強くなければ、小劇場の前衛劇やNHKドラマと何ら変わらないのだから。
 オペラを書くのは初めてということで脚本や演出に遠慮したのかもしれないけど、望月さん自体がだんだんとスケールダウンして小じんまりして来ているのではと心配。
 台詞がドイツ語なので、舞台と字幕を見るので集中力を削がれてオケの音まで気が回らなかったのかもしれませんけどね。だけど、オペラだったらそれも計算して曲をつけるべき。

 原作で多くの風刺とともにちりばめられた隠喩には無限の解釈があるだろうがこの作品のテーマである「空腹感」(精神的空腹感・飢餓感・満たされない思い)を語るには60分の舞台は短すぎるように感じる。
 既成社会を否定していた若者がワーグナーを聴くことで体制に取り込まれながらも、年を取って「空腹感」を感じるのなら空腹を癒すためにパン屋を再襲撃する他に道があったのではなかろうか。
 ワーグナーに象徴されるされるのは呪いとも、あるいは原罪とも生きていくことの宿命とも受け取れる。

 NHKニュースでゲネプロの様子などが放映されたようです。

こちらはルツェルン劇場での模様です。

ソプラノはルツェルン劇場のSumi Kittelbergerという方のようですが、スミ・ジョーと同名なので韓国系なのでしょうか?

1幕だけですが台本がここにあります。
http://www.operalibretto.org/de/leseprobe_kaldi.pdf
これ翻訳して予習しておけば視線が舞台と字幕の間を行ったり来たりしなくてすんだのに。この台本を見ると、「妻(Miya)」が主人公で「僕(Kuni)」は「その夫」となっている。。。

 話は変わるけど、ミュンヘンでマクドに入ったことがあるけれど、客層はいかにも移民とニート的若者?ばかりでちょっと荒んだ感じでしたね。マクドは国によって店も商品も大分イメージが違うみたいなので、原作のニュアンスは伝わったのでしょうかね?

ところで、マクドの店員を演じたバリトンの井上雅人さんは山形北高音楽科御卒業らしい。東京シンフォニエッタでサックスを吹いている小串さんもとか。山形出身者けっこう頑張ってるなぁ。

演奏の東京シンフォニエッタは現代音楽に強い、湘南のヴィオラ弾き山田那央♪さんが参加されておられるオーケストラ。
当日も演奏されてたとか。(ヴィオラが目立つ曲ではなかったのが残念)

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<日本初演/サントリー音楽財団創設40周年記念公演> 2010年3月12日(金)19:00/いずみホール 指揮/ヨハネス・カリツケ/杉山洋一 東京シンフォニエッタ ヴォクスマーナ 演出/粟國淳 美術/横田あつみ 照明/大島祐夫 衣装/増田恵美 音響/有馬純寿 ミヤ/飯田みち代 クニ/高橋淳 チコ/大久保光哉 パン屋/畠山茂 店長/太刀川昭 店員/吉原圭子/井上雅人  昨年のルツェルン音楽祭で初演された「パン屋大襲撃」は、現代日本の作曲家の内、最も才気走った女流と目される望月京の初オペラであ... [続きを読む]

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