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2011/09/04

田中詩織:『ザ・ヴィオラ』

 ジャズ・ヴィオラ界のプリンセスにして若くして第一人者である田中詩織嬢(というかジャズでヴィオラを弾く人は他に殆どいない)のファーストアルバム。
 今年の春くらいにリリースされていたのだけどライブの時に本人から手売りで買えばいいやと思ってるうちに日が立ってしまったので衝動的にアマゾンで購入。『ザ・ヴィオラ』という余りにストレートすぎるアルバムタイトルだけどキャッチコピーが「第三バイオリンなんて言わせない~脇役から主役へ。日本で初めてのヴィオラでのアドリブソロ。ヴィオラの、ヴィオラによる、ヴィオラのためのソロアルバム」というヴィオラ愛に溢れた一枚。

 一応ジャンル的にはジャズになっているが、このアルバムはピアノとのデュオがメインというのもあるだろうけどそもそも擦弦楽器ってジャズとの相性が良くないんじゃないかとも思うんけど、半分ぐらいは叙情的なメロディアスな曲調が多い。謳うヴィオラといえばキム・カシュカシャンだけど詩織嬢はカシュカシャンのファンらしく今年のヴィオラスペースを聴きに行って楽屋に突撃してカシュカシャンと(今井信子さんとも)対面を果たしたとか。この行動力は今井さんも本に書いていたけど夢を実現するには不可欠で、ヴィオラ弾きにはマイルストーンがないので自分で道を切り開くしかないので、こういった行動力が否応なしに身に付くのかも知れない。

 で、メロディアスな曲が多いとはいえ自作のタイトル曲でもある「The Viola」の野太い低音域から切ない高音域まで駆け巡る奔放さや、文字通り「My Funky Valentine」や「春雷」のファンキーさであるとかスタンダードナンバーの「September Second」でのPf伊藤志宏氏とのセッションは、誰の言葉だったか自由なのがジャズなんだと言わんばかりでそういう意味では非常にジャズしてるのでしょう。
 ヴァイオリンでは定番とも言える「Fascination」や「慕情」が小細工なしで聴き応えがあるのは、やはりヴィオラ特有の豊かな音色の賜物。他の曲もヴィオラの魅力を余さず伝えたいというひたむきな意志が感じられる。
 リーダーバンドでもっともっとジャージーなナンバーに挑戦して欲しいけれども、ヴィオラの新たな可能性を切り開く一枚としては貴重。ジャズの要素が入ったコンテンポラリーとしても聴けるし。

 この人、テクニックがムチャクチャある人だと思うのでクラシック界は貴重な人材を失ったとも言えるのだけど、異教徒へヴィオラを伝道するために神様に選ばれたのだと思う他無い。
 彼女にとってヴィオラへ転向したのが必然であったのならジャズに足を踏み入れたのも必然だったのだろう。

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